講 師 :特定非営利活動法人 「みんなのおうち」 理事・副代表 小林普子先生タイトル :「外国ルーツの児童生徒の抱える問題」
特定非営利活動法人「みんなのおうち」では、平成19年度に新宿区と協働事業として、
学習支援を実施しました。 新宿区は、区民の12.36%を外国籍の居住者が
占めており、日本社会の将来を映していると言われています。
【子どもたちの家庭背景】
①親と一緒に入国
→両親共に外国籍:母語、母文化のみ
②親が入国した後、国内で生まれた
→両親のいずれか外国籍:母語、母文化のみ
1.子どもは主に日本国籍:母語は日本語
2.子どもが学齢期に入り来日(日本国籍又は外国籍:母語、母文化のみ)
③親が入国した後、仕事が確保でき、安定して、呼び寄せた
→両親共に外国籍:母語、母文化のみ
子どもは小学校高学年~中学生で来日(外国籍:母語、母文化のみ)
【子どもたちが抱える家庭困難】
①経済的困難
・生活保護世帯
②不安定な家庭
・父親が日本人(養父)の場合、DVが見られる
・シングルマザーの家庭の場合、見捨てられ感が強い
③ビザの問題
・家族滞在ビザからの変更が困難
※親が永住ビザを取得した場合→家族滞在ビザから就労できる定住ビザに変更できる
・日本政府の基準により、高卒では高度人材にならないため、ビザの変更ができない
【家庭内と学習の問題点】
①親
・親は多文化の元で育つ子どもの気持ちや状況を認識せず、自国での経験とは
異なる点に考えが及ばない
・食育の重要さが認識されず、スナック菓子が主食
・母国を誇りと思えるよう子どもに伝えていない
→例)「悪い事をすると○○(母国)に帰すよ」など、子どもを罰する時に使う
・親の日本語能力が不足しているため、勉強を教わることができず、落ちこぼれて
非行に走るケースが数多く見受けられる。
②子ども
・漢字圏の子どもは、日本語と同じ漢字で意味や読み方が異なる事、漢字の形態
が微妙に異なる事などを理解していないまま、自分は日本語ができると思い、
後で学力向上しない要因となる
・流暢な日本語会話をし、日本名を持っているケースなど、傍目から日本人の両親
の元で育った子どもと変わらない場合、学習上の問題が判りにくい
・小学校高学年になると、自分のルーツを隠し、母親を馬鹿にする
・多言語、多文化を身に着けている価値を理解せず、日本人になる事が良いと思い
込んでいる
【子どもたちの抱える教育課題】
①日本語の課題
・国語は時間をかけても成果が上がらない
→教科を介して日本語の語彙を増やす
・会話、文章を読むことはできても、文章を書くことが困難
→教科に関係なく、設問等からも声を出して読ませる→意味の理解度を確認
・カタカナは日頃の使用頻度が少ないため理解度が低い
漢字→ひらがな→辞書→母語で意味を調べる
②教科学習
・国によっては理科、社会、体育、音楽の教科学習がない
→内申点が取れない
・教科学習の効率:数学>英語>理科>社会>国語
【高校受験をクリアする子どもたち】
・児童・生徒の内訳は小学生が1割、中学生が9割
・経済的理由から目標は学費の安い都立高1本で受験に備える
・ボランティアが英語、国語、数学、社会、理科の5教科を教えている
・中学3年生には、願書の書き方、面接のポイント、各子どもの相談にのり、
強い信頼関係を築き上げることで、継続して教室に来てもらい、合格させている。
【高校進学の必要性】
・成長しても日本語に自信が持てず、疎外感がつきまとう
・職場では、単純な仕事しか与えられず、転々と職を変え、いつまでも低賃金
での労働状況が続く
・外国籍の子どもは、ビザの種類によって週28時間以上は働けない
→自立ができない→生活保護
・高卒では高度人材にならないため、ビザの変更ができない
→定住ビザの取得が困難→高校卒業後、進学が必要となる
※進学は高額な学費となり、家庭の経済力に左右される
今回の講師、小林さんが活動している新宿と調布では地域性の違いはあるものの、
外国人居住者の多さから様々なケースを知ることができ、また、バックグラウンドを
より深く知ることで学習方法を探す手掛かりになると参考になりました。
子ども日本語教室では、随時、ボランティア募集をしています。
ご興味がありましたら、お気軽にCIFA事務局までお問い合わせください。